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vino con vino

フラメンコ x フラメンコ

先週の土曜は能登さんのカンテライブに行ってきました。

フラメンコと言うと、日本では踊りが真っ先に浮かびますが、
本場では踊りよりカンテ(歌)が重要と言われています。
彼女も踊りのためのカンテではなく、ソロ専門で活動しています。

踊りのためのカンテなら、いくらでも仕事はあるようですが
カンテだけで食べて行くのは、今の日本では難しいことです。

日本で仕事をしながら、自費でソロライブを開き、
仕事を辞めスペインに行っては歌を習い、また日本で仕事をする。

能登さんは最近またスペインに修行に行っていたそうです。
「ヒターノ(ラマ族)にしか興味がない」と言い切った彼女は、
ヒターノから教えを乞うために、毎日その集落のまわりをうろうろして
景色の一部となることから始めたそうです。
警戒心の強い彼らの心が緩んだところで、中に踏み込んでいく。

その根気と情熱は、感心するやら笑えるやら。


フラメンコに一番大事なのは「正直であること」と彼女は言っていました。

体の内側から盛り上がってくるものが声となり私たちに届き、
その響きは彼女の人となりを隠すことなく表わしていて、
正直だからこそ私たちはいつも真剣に耳を傾け、
胸打たれてしまうわけです。

これはフラメンコを知っている知っていないとか
スペイン語の歌詞が理解できるできないとか
一切関係のない話です。
小さなカンテライブが毎回満席なのは、
能登さんの歌声に心の何かを揺さぶられる人がいる、
という証拠なのだと思います。





翌日、日曜日の情熱大陸は沖仁さんでした。
日本のフラメンコギタリストの第一人者。
CDもたくさん出していて、日本ではとても有名人です。

番組では沖さんがこの夏、
本場スペインの権威あるフラメンコギタリストコンクールに
挑む様子に密着していました。

日本でいくら有名とはいえ、スペインに行けば無名のギタリスト。
リハーサルで他の出場者のレベルの高さに愕然とし、
「日本に帰りたい」とつぶやいたりしてる自信のない人。

予選を突破し、次は5人での決勝。
最後まで、プレリア(速いリズム・明るい)にするか
ソレア(威厳があり、深い)にするか悩んだ末、
予選の印象から、ソレアを選択。

ソレアはフラメンコの母と呼ばれる、とても重要な曲です。
本場でソレアはどうなのかしら〜!と
思って見ていたのですが、見事優勝。
日本人初の快挙でした。

畠山美由紀さんと元同じ事務所だったということで、
美由紀さんのライブで沖さんの演奏を聴いたことがありますが、
フラメンコではなかったせいか印象も薄く、
昨日初めて沖さんのフラメンコを聴いてびっくりしました。

フラメンコを弾くとこんなことになるんだ!と。
技術も素晴らしいのですが、雰囲気がまったく違う。
彼のまわりの空気に色がつき、ふんわり包み込まれているような、
不思議な気分になりました。

沖さんはずっと日本で活動を続けていて、
曲もフラメンコフラメンコしていないので
スペインには執着のない人だと思っていたのですが、
今回の番組でスペインへの思い入れの深さを知りました。

最後に審査員から「ムイ・エルパニョール」とてもスペインらしいと
評されていました。
最高の褒め言葉です。
きっと嬉しいだろうなぁ、と、見ている私まで嬉しくなってしまいました。



生まれた時からフラメンコを持っているヒターノと違って
日本人がフラメンコを習得することはとても難しい、というか
不可能に近いことです。

そんな難しい山に挑んでいる2人のアーティストさん。
一見迷いなく、好きなことを続けているように見えていた2人なのですが、
ここまでの道は悩んだり、立ち止まったりの繰り返し。
普通の人となんにも変りないってことがわかって
あらためて尊敬しなおしたわけです。

さて。
今週はスペイン人のフラメンコを見に行くので、
また思い切り楽しんでこようと思います。
by stellabird | 2010-09-10 21:24 | スペイン